- 出演者
- 村上龍 小池栄子
オープニング映像。
沖縄で穫れた魚を、どうやって新鮮なまま運んでいるのか?あがってきたのは10キロほどのキハダマグロ。漁師たちはすぐに活け締めにして、液体の入った箱のなかへ。この正体はシャーベットアイス。これが鮮度の秘密だという。この液体のような氷を作ったのが今回の主役の高砂熱学工業。漁港に氷を売り込んだのは高砂熱学工業の松平。氷はプレハブのような小屋の中で作られ、海水を混ぜた水を冷やし超音波を当てて製造している。これで魚が凍らずに芯までムラなく冷やせる-1度のシャーベットに。長時間-1度を保ちてるので東南アジアなどに新鮮なまま運べるという。これまで使ってきたブロックの氷とは冷え方の違いは?サーモグラフィーでみてみると、ブロックの氷は冷えずに赤くなっている部分が目立つが、シャーベットアイスは均等に冷えていることがわかる。この漁港では、シャーベットアイスの導入後販路が広がっただけでなく、魚の単価も上昇。結果漁師の収入は倍近くになる人も。
高砂熱学工業のメインの事業は、別にある。この日つくばにある研究施設に取引先が見学にやってきた。案内された先にあったのは高砂熱学の実力がわかる筒のような部屋。この部屋はタイの気候を再現し、温度や湿度を自在に操り、体験できるようにしている。オフィスビルなどに配管をめぐらし、館内に最適な空気を送りこむことが本業。東急歌舞伎町タワーや東京駅の駅舎など、名だたる建造物の空調を手掛けている。売上は3633億円。この業界ではNo.1を誇る黒子企業。率いるのは高砂熱学工業社長の小島和人。
高さ330mのに麻布台ヒルズの空調も高砂熱学が手掛けた。その心臓部は50m潜った地下5階に案内してもらったのは凄まじい音とともに巨大な機械と太い配管が伸びる光景が。配管には冷水・中温冷水という文字も。麻布台ヒルズのような大型商業施設では、地下に巨大な冷凍機やボイラーがあり、冷たい水やお湯を大量に使っている。それを各フロアに送り、風を当てて冷暖房を行っている。高砂熱学がこの施設でやっているのはそれだけではない。館内に入っている15もの店舗一軒一軒に対応する空調も手掛ける。麻布台ヒルズカフェは有名シェフが監修したメニューが人気だが厨房は客席とのしきりのないオープンな造りになっている。こうした空間に対し、最新ソフトを使って空気の流れを計算。このカフェの場合では、客席から厨房の方向に流れるように設計。厨房の上にある換気システムでカフェ全体の空気を吸い込んでいる。客席にニオイが回らず気持ちよく過ごせるという。さらに麻布台ヒルズに関する空調の施工図などが置かれた部屋は、細かく配慮して設計した結果、その量は段ボール30箱に及んだ。快適な空調を生み出すためにとんでもない労力が生み出される。その分、受注金額も大きく、大規模施設なら数百億円になることも。
文京区にある東京ドームも高砂熱学が手掛けた。出来上がった当時は屋根がぺしゃんこ状態だったが高砂熱学は、巨大な送風ファンで風を作り出し、それを観客席の上段のさらに上の場所から出している。出てくる時はかなりの強さで、他にも大型の吹き出し口があり、空気を送り込んでいる。また出入り口は空気が逃げないように回転ドアに。外に出る時はぶわっと音がする。中と外の気圧の差によるもので、東京ドームは中の気圧を0.3%高くし屋根を膨らませている。
北海道千歳市で建築中なのは次世代半導体の量産を目指すラピダスの工場。その経済効果は18兆円とも言われるビッグプロジェクトだが、ここにも高砂熱学の技術が。 半導体工場ではチリやホコリは厳禁。そこで部屋をクリーンな状態に保つ高砂の独自の技術が採用された。一般的なクリーンルームの空調を再現。緑の部屋に白い煙をいれると空気の動きがわかる。これがチリやホコリの動きを表している。天井から風が吹く従来の空調ではチリやホコリがあると、人が作業する高さで舞ってしまう。一方高砂の開発した空調は、横から空気が流れ天井で吸い込んでいくので、チリやホコリがあっても人が作業している高さにはおりてこない。比べてみると、クリーンルームの作業場には歴然の効果が。また効率がいいので消費電力を従来よりも4割カット。ラピダスや三菱電機など国内50工場以上で採用。株価はこの2年で2倍に跳ね上がるなど、快進撃が続く。
小島和人は高砂熱学について、ベースは天井の中に水を通る配管と空気を通すダクトがあり、それを設計し快適な空気を提供しコントロールするのがメインの仕事だという。他にも温度、湿度、清浄度、気流なども提供しているという。また売上の98%は空調設備工事で、実績は国内ナンバーワン。東急歌舞伎町タワーや国立競技場など近年開業した高層商業施設の殆どを手掛けている。その商業施設のフロアごと空気を変えて電気がいいのか、ガスがいいのかも調整し、もっと良くするというのが使命だと答えたが自分たちは建物の主治医だと答えた。
今年1月に月に打ち上げられたロケット。月面着陸では、生活圏を宇宙に広げることを目指す宇宙ベンチャーのアイスペースの着陸船を使用。そこには高砂熱学工のある装置が積まれている。水電解装置という、聞き慣れない機械は、水に電気を流し、水素と酸素を取り出せる装置。開発にあたった一人には武田。月には水があると言われ、水電解装置が月で動けばエネルギーになる水素と人が生きるための酸素を取り出せる。宇宙の生活に一歩前進できる。アイスペースのCEOの袴田さんも期待を寄せている。
高砂熱学工業の初代社長の柳町政之助は日本空調の父と呼ばれる人物で、現社長の小島は8代目。資料には、柳町は1920年に空調の専門書を刊行。空調に関する知識も研究もない時代に技術を求める人に広く読まれる事となった。3年後には高砂熱学の前身企業を設立。その時開発したものが展示されている。蒸気機関車のような大きな黒い鉄の機械は、冷房のための冷凍機。世にないものを求め続けた結果、取得特許は500件近くに。空調界のパイオニアとして走り続けてきた。加藤も開拓者の一人だが一人で数十年研究をやってきた。そこから大発明が生まれたという。
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高砂熱学の加藤は開拓者の一人だが一人で数十年研究をやってきた。そこから大発明が生まれたという。ロケットに積まれた水電解装置は加藤の研究によって生まれていた。実際に水から水素と酸素を取り出す。火を近づけると小さな爆発が発生。水素はクリーンなエネルギーとして注目され水素を燃料にした車も販売。しかし水素の製造過程では二酸化炭素が排出される課題もある。しかしこの装置なら、二酸化炭素ゼロで水素を取り出すことができるという。この水電解装置を大手飲料メーカーのキリンが採用。来年にもビールの製造過程で水素を使い始める予定。そして新たな研究も始まっている。錠剤のようなもので温暖化を生む二酸化炭素を吸収しようとしている。今はビジネスにならなくても将来性のあるテーマをムーンショット型研究と名付けて予算を投入したのが社長の小島。
初代社長の企業文化は受け継がれているか?に小島は歴代の社長が予算はフリーで好きなことをしていいという柳町政之助の意志をつないで皆が好きなことをやっていたという。また採用人数も徐々に増えていると答えた。また水素の研究について、20年以上おこない利益が出たが道半ばで終わる研究もあるか?に小島は最近は50に一つか2つだと答えた。また本院が諦めるまでは続けていいという。
建設業界の深刻な課題にむけて高砂熱学工業が作った工場がある。人手不足を睨み、新しく作った工場の特徴は働く人。これまで建設業界に縁遠かった女性や高齢者など、多様な人材を積極的に採用している。一つ一つの作業を簡単にし、無理なくできるようにしている。この工場で作っているのは空調設備のいち部分。これまで建設現場で1から組み立てていたが、ここでは組み立ててから現場に運ぶ。その結果、現場での作業時間が10分の1に短縮。さらに組み立てる部品にも工夫し、鉄でできていた部品の大部分を3分の1の重さのアルミに。コストはかかったが女性や高齢者の働きやすさを優先した。さらに工場の中にはカフェのような休憩スペースもある。現場の作業時間を短縮し、生産性をあげながこれまでとは違う人材を引き入れる。人手不足対策に一石二鳥。
小島は工場で働く女性や高齢者のために部品を鉄からアルミにし、軽くしたがそれで給料が安くなることはないと答えたが、地域の人々に働いてもらっているが、この工場は面白いということで人材も増えているという。そして今では仙台や厚木など各所で活躍してもらうと答えた。また建設業で初めて売上高の目標を外したという小島。自分たちの目指す場所は売上高ではなくお客の企業価値向上。社員が幸せになる仕事をし、お客が幸せになる仕事をしたいと語り、その利益はあとから付いてくると話した。
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村上龍は今日の総括に100年前の1923年、温度、湿度、清浄度などの設備が、今後日本で普及すると考えた初代社長。ダイキンのように空調機自体を製造しているわけではない。オフィスビル、大学、病院、工事といった大規模な設備、施工などを請け負う。2023年3月期決算は増収増益、受注戦略を変えた。支店間で売上を競うのではなく、会社で利益が出る仕事を選ぶ。建築業で初めて売上高の目標を外している。売上高の目標を外すという建築業は、考えられない。自信があるのだろう。約100年、空調に命を得てきた自信だ。とした。
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カンブリア宮殿の次回予告。