- 出演者
- タモリ 渡辺瑠海 木村文乃 坂上暁史 藤井賢彦 白山義久
1月、川崎沖では釣り人たちが季節外れのタチウオを狙っていた。東京湾の環境が変わってきており、夏の魚が獲れるようになっていた。北海道では季節外れのマイワシの大群があらわれ釣り人が殺到した一方、福島県では不漁からズワイガニの初競りが中止になった。今日本各地を不漁の波が襲っている。
オープニング映像。
寿司カウンターのセットでオープニングの挨拶。今回のテーマは「日本の魚」。中トロ、ホタテ、ボタンエビ、ズワイガニ、アワビ、赤貝、ウニの寿司が出されたが、中トロ以外すべてのネタは2100年には国産物が食べられなくなる可能性があると予測されている。ブリはかつて冬が旬だったが今は夏の終わりに一級品が獲れる。
岩手・釜石市の漁船「萬宝丸」の漁に同行した。漁場に到着すると伝統のサケ定置網漁を開始。この日獲れたサケは4匹だった。2014年にヒア15,331トンの漁獲があったが2023年は96トンにまで減少していた。大分の関さばも、2013年には137トンの漁獲があったが2022年は22トンまで減少していた。関さばが釣れないため、由布院の温泉では関さばのコースをやめていた。山口のトラフグ、北海道のスルメイカ、静岡のシラス、宮城のマダラ、北海道のさんま、岡山のマダコと各地で名産の漁獲が大幅に減少していた。岡山の漁師、大谷さんは夏場に水温が上がり過ぎるため卵を産んでも孵化しない、漁師が成り立っていかない時代になったと話した。
リモートで各地の漁業関係者に話を聞いた。小田島水産食品の小田島さんは昨年はイカが300トンしか獲れず塩辛が作れなくて困っている、10年前から価格が10倍になっていると話した。山形の漁師、鈴木さんはエサの値段が10年前と比べて5倍に上がっていると話した。鳥羽市で牡蠣養殖をしている浅尾さんは牡蠣が出荷前に6~7割、ひどいときは8割死んでしまうと話した。大分の漁師、須川さんはサバの漁獲量が全盛期に比べて20%になっている、温暖化の影響でサメが増えて釣り上げた魚を食べてしまうと話した。
日本各地の不漁の原因の1つには地球温暖化がきっかけで起こる黒潮大蛇行がある。黒潮の流れにのって日本近海に魚が集まり太平洋を北上していたが、近年黒潮が蛇行し紀伊半島沖から離れている。
黒潮大蛇行について、三重大学の立花教授は「偏西風大蛇行と言っても良い」と話した。普通西から東へまっすぐ流れる偏西風が近年は南北に蛇行しながら流れるように変わってきており、これが影響しているという。海面をこする風の力が弱いため潮の流れも遅くなり黒潮大蛇行が発生する。黒潮大蛇行は2017年に起き、黒潮と一緒に動く魚たちが姿を消しつつある。和歌山では伊勢エビの漁獲量が黒潮大蛇行観測前の2016年に比べ66%減少していた。三重・熊野市では2016年には745トンあったさんまの水揚げが、2022年は0トンだった。立花教授は大蛇行する黒潮と一緒に暮らしていく生活スタイルを変えていく必要があると話した。スタジオでは白山氏が水温が下がらないと海藻が育たずアワビなどの貝類・魚が減ると指摘した。
専門家に調査を依頼すると消えた魚の現在の居場所が見えてきた。23年舞鶴湾を潜水調査している京大の益田教授は、地球温暖化で全体的に暖かくなり赤道付近に棲める魚がいなくなっている、南の魚が北上しその影響が舞鶴でもみてとれると話した。世界の海水温は100年あたりで約0.61℃上昇したが、日本近海は約1.28℃上がっている。白山氏は温暖化による大陸の気温上昇が日本近海の海水温上昇に影響していると指摘している。藤井氏は1℃の水温上昇は5度の気温上昇に相当すると話した。
東京湾の海底にはサンゴの群落が広がっていた。20種類以上の造礁性サンゴが存在しており、ここ5年で南方系サンゴが増えたという。南の海にいるはずのエンタクミドリイシも定着していた。季節来遊魚が急増し、かつては水温が下がるといなくなっていたが今は水温が上がったため越冬している。白山氏はサンゴは1年に平均14キロ北上していると話した。
北海道大学の笠井教授は、スルメイカが姿を消した北海道でウロコやフンなどから魚の痕跡を探る環境DNA調査を行っている。宮城・志津川湾で環境DNA調査を行っている南三陸町自然環境活用センターの鈴木さんは、鹿児島などホンベラなど南方系の魚のDNAが検出されている、地球温暖化の海水温上昇に伴うものと考えている、泳ぐのが苦手な魚が逃げれず死んでしまったりその地域から消えることが起きると話した。相模湾では九州近海に棲息していたアイゴやブダイのDNAが検出されるようになっている。九州大学の清野教授は唐津湾で最近沖縄でよくみられるアオブダイ属のDNAが検出されるようになったと話した。清野教授は環境DNA調査に地元のダイバーの情報をかけ合わせて研究している。山口で有名なマフグ、長崎で有名なブリ、福井で有名なサワラが近年函館湾で増加中。九州・四国周辺の海に棲息する魚も北に棲息域を拡大している。藤井氏は伊勢エビが北海道に到達した報告があると話した。
2年前に鋸南町の海を映した映像では海藻が生い茂っていたが、今では姿を消していた。エサがないためかつて獲れたサザエ、アワビも育たなくなっていた。海水温上昇に加えて「もう一つの悪魔」と呼ばれる海洋酸性化という現象が被害をもたらしている。
海洋酸性化について多くの専門家が警鐘を鳴らしている。二酸化炭素排出量増加に伴い海が吸収する二酸化炭素量が増え、急激に海の酸性化が進んでいる。日本近海のpHは10年あたりで約0.02のペースで低下していた。海が酸性化するとサンゴが炭酸カルシウムの骨を作りづらい環境になり、甲殻類も影響を受ける。海洋研究開発機構の主任研究員、木元さんは、多くの魚のエサになっているミジンウキマイマイの体をX線を用いて撮影し3D画像を作成した。正常な殻と比べると酸性化の影響受けたものは殻が薄くなり、穴もあいていた。木元さんはミジンウキマイマイが減少すると海洋生態系そのものが壊されてしまうと話した。琉球大学の栗原教授は北の冷たい水に棲んでいる生き物ほど酸性化の影響を受ける可能性があると指摘した。白山氏は海洋酸性化が進んだ海水で実験的に育てたカクレクマノミは敵がきたシグナルを送ると敵に向かって泳ぐという異常な行動を起こす、酸性化によって神経系の発育が正常ではなかった可能性があると話した。
2015年のパリ協定によって世界共通の温室効果ガス排出量削減に関する目標が示された。産業革命以前と比べて気温上昇を1.5℃に抑えようとしている。日本人のCO2排出量は年間8.48トンだが、江戸時代はほとんどCO2を排出していなかった。
現代と江戸時代の生活を紙芝居で比較した。現代は読書する際の照明で一世帯あたりCO2を年間240kg排出しているが、ロウソクだった江戸時代はほぼゼロ。現代はエアコンで一世帯あたりCO2を年間110kg排出しているが、手動扇風機だった江戸時代はほぼゼロ。現代はごみ出しで一世帯あたりCO2を年間150kg排出しているが、リサイクルしていた江戸時代はほぼゼロ。現代はタクシー移動だが、江戸時代のかご移動であればガソリン由来のCO2排出量が年間125万トン減る。
日本が目標に掲げる削減量を達成するためには、国民1人あたり約2.5トンCO2排出量を削減する必要がある。できること1つ目は「太陽光パネルを導入」。化石燃料を燃焼させる火力発電使用が減り1.28トンの削減になる。次に「テレワークの実施」で0.28トンの削減になる。「服を長く切る」で0.19トンの削減、「まとめ買いをする」で0.15トンの削減、「自宅でウォーム&クールビズ」で0.11トンの削減、「電気をLEDにかえる」で0.09トンの削減になる。ノルウェーは2025年までに新車販売を0にする目標を設定。アメリカの一部の州では2035年までにガソリン車の新車販売禁止を目標に取り組んでいる。日本では2030年代半ばまでに新車販売の100%を電気自動車にすることを目指す。発電では政府が保有する建物や土地に設置する太陽光発電を12万7000kWにすることが目標。洋上風力発電など再生可能エネルギーへの取り組みにも力を入れている。
CO2排出量は2013年をピークに減少している。2020年は人の移動が減った時期で、算定開始以来CO2排出量が最少になった。
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南三陸町では牡蠣養殖が経済を支えてきたが、1980年代に過密養殖が原因で品質が低下した。サステナビリティセンターの太齋さんは2000年から南三陸町に移住して海の調査を続け、牡蠣棚の数を減らすよう提案した。漁師のほとんどは耳を傾けなかったが、東日本大震災で南三陸町の牡蠣棚は崩壊した。
震災で南三陸町の牡蠣棚は崩壊し漁師たちが養殖イカダの数を3分の1以下に減らすと、エサがいきわたり牡蠣の品質が上がった。震災前は収穫まで3年かかっていたが1年に短縮され、年間生産量も約1.6倍になった。収穫頻度が減り船の燃料使用も減ったため、経費も削減できたうえCO2排出量も軽減した。白山氏はCO2削減に積極的に取り組んでいる企業を応援する好循環を実現すると明るいものになると話した。藤井氏は再生可能エネルギーを選んで買うといったできそうな取り組みをやっていくことが大事と話した。