- 出演者
- 井上二郎 山下毅 上原光紀
オープニング映像が流れた。物価の高騰が止まらない。給付や減税が国会で議論されている。石破首相は減税には時間がかかるので給付の方がはやいという。立憲民主党の野田代表は、給付付き税額控除、消費税の食料品ゼロパーセントを目指すという。いま必要な経済政策はなにか。選挙の争点は、物価高対策となっている。経済情勢や求められる政策を議論する。
物価高の現状を見る。消費者物価指数の推移。先月の消費者物価指数は、昨年の同じ月より3.7パーセント上昇。米類は101.7パーセントではじめて前の年の2倍を超える水準になった。コーヒー豆は28.2パーセント。鶏卵は12.6パーセント。大和総研の熊谷さんは、コメや野菜の物価の上昇が、外食産業などに波及しているという。賃上げも続く。サービス価格は上昇しているという。実質賃金が上がるまでの時限的な措置として、困っている人に迅速に支援を行うことが必要だ。ニッセイ基礎研究所の斎藤さんは、3パーセントを超える上昇は高すぎるという。 補助金政策の反動という面もある。日銀の物価目標は2パーセントなのでそれを若干上回る程度だという。補助金を入れて値段を下げるのは行き過ぎだとのこと。慶應義塾大学の寺井さんは、1970年代の狂乱物価の時代は物価上昇率20パーセントを超えたという。80年代は2パーセント。インフレ率は格段に高いとは言えないとのこと。インフレ率とは物価がどれくらい上昇したかを示す指数。家計にとっては負担感が数字以上に大きい。第一生命経済研究所の永濱さんは、食料とエネルギーを除くと、1パーセントしか上がっていない。半分以上は食料とエネルギーだ。コストプッシュインフレだ。生活必需品になるので、低所得者の方が負担感は高くなる。コストプッシュインフレとは原材料費など生産コストの上昇により起こるインフレだ。税収は過去最高を上回り続けている。家計への支援策が必要になってくる。斎藤さんは補助金は行き過ぎだという。補助金は辞めるのがむずかしい。ガソリンやガスなどに補助金を入れている。ガソリンを使っている人と使っていない人がいるので不公平だ。補助金政策は慎重にすべきだ。
アメリカのトランプ大統領はSNSで、イラン核施設3か所に攻撃したと発表。イスラエルとイランの攻撃の応酬が続く中、トランプ大統領はイランの核兵器の保有を認めないとして、軍事介入に踏み切ったという。イラン側が強く反発するのは確実な情勢だ。ニュースセンターから伝えた。
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- ドナルド・ジョン・トランプ
国の税収は2009年以降右肩上がりの状態が続いていて、今年度予算では約77.8兆円で過去最大となる見込み。一方国債は今年度末には1129兆円まで膨らむ見通しで主要先進国の中で最も高い水準になっている。こうした状況の中、政府は今月骨太の方針を決定した。基礎的財政収支について黒字化を目指す時期を改めて示し、これまでの目標である2025年度が難しくなっていることを踏まえて「今年度から来年度を通じて可能なかぎり早期」とした。
日本の財政状況は。熊谷氏は「今足元でインフレで先行して税収が上がっているからといって先にそれを使ってしまう無駄遣いをする余裕は今の財政状況にはない」、永濱氏は「基本的に財政が改善するということは政府債務残高のGDPが下がればいい。G7諸国で見ると日本だけ下がっている。さらに日銀の資金循環統計を見ると直近は財政黒字になっている。まさにインフレの状況で財政がよくなっている状況。家計にしわ寄せが行っているのであれば政府債務残高GDPの改善を維持しながらある程度の財政制作はできると考えている」などとした。資金循環統計は政府の資金の過不足をみたもので、統計開始以来初めて黒字になっている。永濱氏は「これを見ると税収を経済状況に応じて取りすぎている部分がある」などと指摘した。寺井氏は「賃上げとインフレで税収が伸びたが、いずれ支出も伸び始める。そのことを忘れてはいけない」、斎藤氏は「政府が必要に応じて赤字を出すことは決して悪いことではない。経済をうまく回すためにどこかが赤字になるというのが正常な姿」などと話した。石破総理が”日本の財政はギリシャよりよくない”などと発言したことについては「どの指標を見るか。1つは分母となるGDPが全然伸びてないという面もあると思う」などと話した。熊谷氏は「日本の財政不安からくる国債売りが加速している」、一方永濱氏は「仮に日本の財政不安が大きくなっていればもっと10年債の利回りが上がっていると思う。今はむしろ世界的にみてもそんなに日本の財政のリスクは高くない」などとした。
有効な物価高対策とは。与党側は給付。国民1人あたり2万円を給付し子ども・住民税非課税世帯の大人には2万円を加算すること検討している。野党側は減税に軸足を置いた主張が多くみられ、消費税税率の引き下げや廃止などを訴えている。永濱利廣は減税までの間、特定のクーポンなどを提案。熊谷亮丸は財源の問題があり、対象を絞った給付の方がよいとした。斎藤太郎は減税に賛成。給付では貯蓄に回り消費はさほど動かないとみている。寺井公子は給付の方が本当に必要な人にピンポイントに届けられると述べた。
2009年には定額給付金として1人あたり1万2000円。約2兆円規模の支給を実施した。2020年には特別定額給付金として1人あたり10万円を給付。予算規模は約12兆9000億円。消費増加効果は2009年が25%、2020年が22%程度。消費税は年金、医療、介護、少子化対策あんど社会保障の主な財源とされていて今年度見込まれる消費税収は約31兆4000億円。消費税には逆進性という性質がある。寺井さんは「ピンポイントで配ることができる給付のほうがいい」、永濱さんは「社会政策としての恒久的な消費減税は有効」、斎藤さんは「物価高で継続している厳しさのときにピンポイントで給付を配るのは効果的でない」、熊谷さんは「低所得には給付金の方が手厚い、裕福な人には減税のほうがメリットが大きい」などと話した。
物価高対策として有用な手段はあるのか。あきらかに日本経済が変わったのはデフレからインフレへの転換だと斎藤さんがいう。おそらくこれからも続く。インフレになると増税になるという。ここは避けるべきだ。過度な増税は避けたほうがいい。寺井さんは、所得税について制度改正をすべきだという。令和7年の税制改正に向けて、インフレが進行し、基礎控除が固定されている。物価が上がっているのに、課税が狭まったと感じる。所得税は累進課税だ。基礎控除との額を物価変動に伴って変更するようにすべきだ。熊谷さんは、社会制度改革と、食料品価格の引き下げについて言いたいとのこと。可処分所得は23パーセント伸びている。食料の消費も伸びている。エンゲル係数の問題点は、可処分所得で消費に回す金額が下がっている。社会保障に関する将来不安がある。コメや食料品価格を下げる必要がある。永濱さんは、短期的にいかに実質賃金を上げるかを考えるべきだという。労働生産性は日本はヨーロッパより高い。行き過ぎた労働時間規制の緩和が効いてくるだろう。労働分配率も問題だ。日本は労働市場の流動性が低いことによって、従業員に分配されにくい。転職支援や減税もふくめ実行する必要があるという。公益条件の改善が求められる。安全性のある原子力発電所の再開など必要となるだろう。
労働団体の連合が、今年の春闘の集計結果を発表。賃上げ率は5.26パーセント。ただ賃上げは物価の上昇に追いついていない。実質賃金指数は、4月は-1.8パーセント。4か月連続でマイナスになっている。物価上昇を上回る賃上げは実行できるのか。賃金の上昇が追いつくのがなによりの物価高対策だ。経済全体に行動の波及効果が必要だ。裾野の広い賃上げが求められている。どうして物価高を上回る賃上げができないのか。斎藤さんは、名目の賃金上昇率は十分だったという。ただ、物価上昇が上振れしている。消費者物価はこれから落ち着いていく。これが持続するかが問題だ。来年は4パーセントの賃上げになるだろう。熊谷さんは、分配政策に傾いている。成長戦略を強化することが課題だ。外国人や女性が活躍できるようにするなどをすれば、潜在的なGDPは、14.6パーセント上がってくる。日本は設備投資が足りない。ITの投資などが必要になる。賃上げを起点とした賃上げと設備投資の好循環を起こすことがカギになる。永濱さんは、労働市場改革については熊谷さんと意見が一致するという。60代の人たちは、正社員だったのに、定年で非正規の低賃金で働いているので、正社員で活躍することが大切になるという。非正規労働者は好んで非正規ではたらいている人が多い。大企業の一部で、自由に働ける社員も増えているという。そのようにすれば賃金は上がってくるという。流動性が高まったときに不利益を被る人もいるのか。寺井さんは、しっかりとしたスキルを身に着けた人が、転職する際には、ふさわしい職につける革新が必要だという。女性の活躍という点では、家事と両立できる人はそれほどいない。短時間で働いて、しっかり活躍する制度も必要になる。政府は賃上げを重視していると斎藤さんがいう。政府は直接賃上げに関与することはできない。景気を下支えすることが必要となる。今の賃金は、労働の受給がいい、物価が上がっている、企業業績がいいこと、この3つが揃ったことで賃金が上昇している。これを壊さないようにしていくことが必要となり、それが政府の役目だ。賃上げにおいて急いでやることはなにか。熊谷さんは、賃上げと設備投資の好循環は始まっているという。投資減税を行うことが必要だ。永濱さんは、就業支援のワクとして、職業訓練を受けているときの条件が厳しい。投資減税が必要だ。資本蓄積を上げていくことが重要になる。今の日本経済にはなにが必要なのか。斎藤さんは、消費主導の景気回復の実現が重要となるという。なぜ日本の設備投資が伸びないのかというと国内の需要が弱い。消費が弱かった。所得が増えてこなかったことを解決しなければいけない。恒常的に所得が増えることが必要になる。デフレを脱しようとしていると寺井さんがいう。ルールづくりに着手することが必要だという。永濱さんは、技術者の育成を中心にした教育改革が必要になる。熊谷さんは、国家のグランドデザインが必要になる。経済成長と社会保障計画と財政の健全化の3つを三位一体で進めることが必要となる。労働市場改革は宝の山だ。社会保障については負荷ベースを拡大して給付金を拡大する。小さなリスクは自助、大きなリスクは公助とする原理原則を貫く。ポピュリズムに陥らずに、インフレによって再建できると思わずに、次世代につけを残さないようにしなければいけないという。永濱さんは、成長戦略の議論は行われているが、実現性が乏しいという。熊谷さんは、地方創生は公が行って、民を巻き込めていないという。プラットフォームを作ることも肝要だという。物価高対策について専門家の皆さんに討論してもらった。NHK+でふたたび見られる。