- 出演者
- 栗原望 油井秀樹 酒井美帆 宇野重規 市原麻衣子
オープニング映像が流れ、出演者が挨拶した。
視聴者の声とともに、選挙イヤーとなった2024年を振り返り民主主義の行方について考える。「世界の選挙が民主主義のあがき、断末魔に感じる」などと紹介。
特集は、“選挙イヤー”と民主主義。世界最大とも言われるインド総選挙や、中国との距離感が問われた台湾総統選挙など今年は70以上の国や地域で重要な選挙が行われた。投票する機会を得たのは約37億人。一方で、選挙の公正性を巡る問題や国外勢力による介入など、民主主義の根幹を揺るがしかねない課題も浮き彫りになってきた。視聴者から650以上の声が寄せられた。
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- ドナルド・ジョン・トランプ民主進歩党
今年番組で取り上げた選挙の一部を紹介。印象に残った選挙について、「イギリスの総選挙で政権交代があった際にスナク前首相とスターマー首相が称え合うような姿があり成熟した姿を見たような思い」「モルドバの大統領選挙でロシアか欧米かで揺れて、欧米寄りのサンドゥ大統領が再戦を決めた。ロシアの選挙干渉もニュースになった」などと述べた。一橋大学大学院・市原さんは、昨年選挙イヤーに入る前にはかなり荒れた1年になるだろうとみられていたという。実際に選挙が荒れたのは、アメリカと欧州が多かったという。他方で、インドやトルコなど野党勢力が拡大したところもあり、非自由主義的なところな与党に対抗するような力となった。典型的な権威主義国ロシアやフィンランドのような民主主義国といったところはあまり変化はなかったという。東京大学・宇野さんは、人類あげての実験の1年だったという。フランスは明らかに政党制が壊れてしまい右派政党がでてきたり、2回答票しても連立政権を組むことすら中々できないという国が出る一方で、インドという世界最大の人口国が総選挙をした。これだけ多くの世界中の人が選挙という実験に参加した年であるという。明らかに選挙という仕組みが根本からおかしくなっていると感じる一方で、これだけの人が参加して曲がりなりにも最後までこぎつけたということをみても、まだまだ民主主義は断末魔ではなく実験が続いていると考えている。視聴者から寄せられた声は650以上。民主主義の言葉と共に関心が高かったのがSNSなど。
今年1月番組では台湾の総統選挙を取材。ここでもSNSが選挙にもたらす大きさが露わとなった。中国と距離を置く頼清徳氏が当選したが選挙期間中頼氏の偽動画がSNSで拡散された。選挙結果を揺るがしかねない情報をめぐる激しい攻防が起きていた。そして衝撃を持って伝えられたのがルーマニアの大統領選挙。ロシアよりの主張をする無名候補のジョルジェスク氏がTikTokを使った選挙戦で躍進、大規模な選挙戦を行わなかったにもかかわらず1回目の投票で現職の首相を抑え1位となった。そこには「ボット」を使った拡散が見えてきた。憲法裁判所はロシアによる介入の可能性があるとして選挙を無効とした。
スタジオの一橋大学大学院の市原麻衣子教授はSNSについて「SNSは期待がもたれているからこそロックされているという現実があり、それに加えSNSをとして一般の人がフィルターを通さずに発することができるようになったという難しさがある」と説明。東京大学の宇野重規教授は「一番気になるのはどのメディアを使って世の中を見るかによって全く違う世界が見えてくること。SNSで見える世界というのはどうしても短い時間の中で繰り返しというのが多くなってくる。」などと語った。視聴者からは『SNSと民主主義は相性が悪いのではないか。ネットをしているうちに知らず知らずのうちにある方向に傾いていってしまう』という声があった。宇野教授は、民主主義は人の視野を狭めてしまう。そこにSNSが加わる。誰かと対話しているような、民主主義に参加しているような気分になってしまうという。欧州では、ロシアの影がちらついて、民主主義が危うくなっているという投稿を紹介した。ルーマニアではロシア寄りの候補がSNSで躍進。ロシアの介入だという声もある。ロシアは欧米を敵視している。モルドバなどでは国民の不安を煽るような情報が飛び交った。ジョージアでは多くのNGOの活動を欧米が支えている。宇野教授は、情報戦は国際政治の常套手段になってきたという。使い勝手のいい武器だ。戦時と平時の区別はなくなった。世界各国、武力、経済力、情報戦が主になってきた。2024年のアメリカ大統領選を見ると、まさに戦時と平時の区別がなくなってきているのがわかると市原教授がいう。ロシアはサイバースクワッディングと呼ばれる既存のメディアに似たようなホームページを作り、そこに人々を誘導している。中国は既存の分断を煽っている。イランは既存のWEBサイトにハッキングをかけて情報を得ている。デジタル技術は、選挙に大きな影響を与えている。宇野さんは、行政権はデジタル技術がプラスに働く。しかしSNSは代議制とはまったく違うシステムだ。一定のルールが必要になる。妥協し共存するポイントを探るのが民主主義となる。民主主義社会の中で、他人を信じたい、対話をしたいという状況をSNSやデジタルは破壊しようとしている。対話の基盤を壊している。
視聴者が注目した「公正さ」について視聴者の声を紹介。『専制的なリーダーの不公正な選挙。外国からの干渉で操作された選挙が多く選挙の実施と民主的であることは無関係と分かった1年でした』という投稿。『選挙をしても結果を改ざんしたと報じられる国もあります。この状況が続くと自由や民主主義が危機に瀕すると思います』といった声が寄せられた。ベネズエラ、モザンビーク、ジョージアでは野党側が選挙に不正があったと選挙結果を認めず与野党の対立が深まっている。国連開発計画(UNDP)のアヒムシュタイナー総裁は「明らかに不正だった選挙がある。注視すべきなのは選挙に不正や過ちがあったのか。それとも敗者が勝者を認めたくないのかという点」と説明。その上でデジタル技術による教育の重要性を強調した。現在も混乱し暴力が続く国がある。一橋大学大学院の市原麻衣子教授は、選挙が自由で公正になるためには市民的自由が確保されていなければいけないという。自由に発言できるか、メディアが発信できるか。弾圧されている状態があり、自由と公正は弱まっている。マイノリティの権利の保護なども必要だ。権威主義が増えてしまっている。選挙が不正を生んでいるかたちになる。東京大学の宇野重規教授は、選挙による民主主義は一日にして成らないという。権力は暴力を使う。社会的圧力をかける。経済的利益を与えるようになる。選挙制度を操作する。グレーゾーンの国は多くなっている。民主主義はどのように変化していくのか。世界は民主的になるはずだと思ったが、そうはならなかったという。世界がつながっているからこそ、隣の人と対話をしなくなった。どこかの人とつながっている気になっている。孤独は民主主義の敵だという。今回視聴者の声で多かったのが『世界あちこち自国ファーストへの傾向に拍車がかかっている』『ドイツなどで極右が躍進した。その国の民意なのはわかるが今後多くの国が排他的になるのではないかと不安』というもの。
今年6月に行われたヨーロッパ議会選挙では、EUに懐疑的な右派や極右政党が議席数を伸ばした。極右政党が大勝したフランスではマクロン大統領が国民議会を解散し選挙に打って出るも、大幅に議席を減らして政権基盤が不安定な状態になった。ドイツでは「極右」と批判される右派政党「ドイツのための選択肢」が議席を増やした。一方、米大統領選では「自国第一主義」を掲げるトランプ氏が圧勝した。米・ペンシルベニア州では経済状況への不満やトランプ氏への期待の声が多く聞かれた。
田端祐一氏の解説。米大統領選ではインフレ・格差に苦しむ人たちに「民主主義を守る」というハリス陣営の訴えはそれほど浸透しなかった。トランプ氏は忠誠心のある人物を司法機関や情報機関のトップに据えようとしており、就任後は対立する政治家や政府高官に対する報復キャンペーンに乗り出すのではないかとみられている。米国民が「民主主義陣営」だと誇りを持って語れるかどうか重要な4年間になる。
宇野氏は「米国が自国のことだけを考えて果たして世界の民主主義は守れるのか。今のところ米国は自国第一主義に突っ走りそう」などと話した。市原氏はヨーロッパでの右派台頭の背景について「国内で経済格差の広がり、貧しい人々がアイデンティティーの政治に助けを求める傾向がみられる」などと話した。
UNDPは「民主主義のパラドックス」に警鐘を鳴らしている。UNDPによると、世界のほとんどの人が民主主義を支持する一方で、権威主義的な指導者を選ぶ傾向が強まっているとして、それを「民主主義のパラドックス」と呼んでいる。UNDPのアヒム・シュタイナー総裁は「多くの人々が国家の発展における敗北者だと感じている。指導層が国民の信頼と自信を失えば民主主義は崩壊し、独裁政権の下で暮らすことになるかもしれない」などと話した。
民主主義の未来について。市原氏は「説明責任の強化が求められる。三権分立などの水平的な説明責任と、市民社会・メディアが政府を監視していく垂直的な説明責任の2つがある」などと話した。民主主義が正しく機能するために必要なことについて宇野氏は「まず自分が参加しているという実感を取り戻すこと」などと話した。また市原氏は「日本は自由主義的な考え・政策を実践する力が弱いと感じる。日本を始めとした民主主義国家は戦争の言説に民主主義が巻き取られないようにすることが必要」、宇野氏は「世界各国で少数与党政権が誕生したが、少数与党は悪い面ばかりではない。少数与党政権が他の政党といかに対話を重ねて政策を決めていけるか。このプロセスの実践という方向に向かっていってほしい」などと話した。
F2。「木の穴にはまったリス」。国際的な写真コンクール・コメディー野生動物写真賞の今年の大賞に選ばれた。ジュニア部門では「キスするフクロウの子ども」と題された写真が受賞。他にも、笑っているように見えるオットセイや、考え込んでいるようなチンパンジー。4人組のギャングみたいなペンギンたちの写真。野生動物の楽しい姿が世界中から寄せられた。
台湾で行われたウエイトリフティングの大会。参加者は全員70歳以上で、最高齢は92歳。90歳のチェンチェンさんは、今回は約45kgのバーベルを持ち上げ自己記録を更新。観客から大きな声援が上がった。
米国ニューヨーク中心部タイムズスクエアに「5」が届いた。ビルの22階から新年を迎える、恒例のカウントダウンイベントに向けた準備。すでにある「202」と合わせて「2025」の文字が完成。新しい年は、もうすぐそこ。
視聴者から寄せられた意見を紹介。「本来の民主主義を取り戻す上で我々は有権者として何が出来るのでしょうか」「新たな戦争、紛争が年々増えていると感じます。自国の利益だけに囚われない政治が行われることを望みます」などの声があった。