- 出演者
- 村上龍 小池栄子
オープニング映像。
『CRAFT MISO 生糀』は国産米100%の麹をたっぷり使って甘味を引き出し、塩分は25%カットしている。コンセプトは“そのまま食べておいしい味噌”、従来のみそとは違うフルーティーな味わいを打ち出してヒットしている。作っているのは長野・下諏訪町に本社を構える「ひかり味噌」。従業員309人、売上高215億円とみそメーカーとしては大手の会社。2カ月に一度ランチ会を開催し社員の親睦を深めている。料理のレシピはホームページで公開されていて、みその魅力を広める取り組みを行っている。ひかり味噌はみその用途を広げることで成長している。
村上龍と小池栄子が、食生活を変える商品を生み出すみそメーカーを徹底深堀り。ニッポン“伝統の食”の革新者 第2弾。新市場を開拓!みそ業界3位の挑戦。
味噌汁用ではない家に2つ目のみそというニーズを掘り起こし売上を伸ばしているCRAFT MISO。作っているのは長野・飯島町にある工場。通常みそは蒸した大豆に米麹と塩を加えて発酵・熟成させて作る。CRAFT MISOは独自技術で作った特別な米麹を熟成させたみそに加えてさらに熟成させることで独特な甘味を持つフルーティーな味わいになるという。CRAFT MISOのコンセプトを考えたのは東京のマーケティングチーム。「気軽に楽しめるみそを提供することで若いユーザーも獲得できるのでは」と考えた。狙いは当たり、2022年の発売以来、売り上げは年平均2倍ずつアップしている。
ひかり味噌のもう一つの強みは商品の種類の多さ。自社ブランドの他、大手スーパーなどのプライベートブランド、業務用とみそだけで約200種類、加工食品などを加えると1000点以上を製造している。原料の種類や配合比率を変えたり、発酵・熟成の条件を変えることで味や風味の異なるみそを作り出せる。中でも最高級のみそ造りを特別に見せてもらう。
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熱を加えず自然のまま発酵させる天然醸造。みそは気温などの条件や熟成期間によってつくるたびに味が変わる。定期的に状態を確認し、出荷のタイミングを判断する必要があるという。ベストな状態に熟成させたみそは麹の粒をつぶさないよう、丁寧に手作業で容器に詰めて出荷する。この『天然醸造味噌 名匠』は500gで2603円。贈答用の高級みそとして百貨店などで扱われている。一方、『味噌ヌーボー初熟』は短期熟成で出来立てを味わうという造りでヒットした。
みその需要は減少を続けている。林善博社長は「食生活の変化に加えて、少子高齢化や小さい単位の家族でそろって夕食という場面が減ってきている」と話した。『CRAFT MISO 生糀』については、「みそ汁以外の用途を考えようというのが最初のきっかけ」とした。『味噌ヌーボー』は、毎年出来栄えの違うものを新物として味わってもらおうという発想の商品だという。
ひかり味噌の東京オフィスでイギリスの日本食チェーン「itsu」との会議が行われた。itsuの商品にひかり味噌のみそが採用され、日本での販売も目指すことになったという。海外での販売に力を入れる背景にはこれまでの経験が深く関わっている。
ひかり味噌は1936年に林社長の曽祖父が起した小さなみそメーカーから始まった。当時、長野にはマルコメやハナマルキなど既に多くのみそメーカーがあり、ひかり味噌は後発からのスタート。林社長が生まれたのは1960年。当時はまだ従業員30人程の規模で、林社長は両親が身を粉にして働く姿を見て育った。1982年に慶応大学法学部を卒業し信州精器(現セイコーエプソン)に入社。念願だった海外営業に配属され、アメリカやイギリスに駐在した。しかし、入社して10年程たったころ父に後を継いでほしいと懇願された。そうして1994年に林社長は家業のひかり味噌に入社した。
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新たな発想の商品を次々と発売し業界3位に躍進したひかり味噌。林社長が入社した当時、主力商品は大手スーパーなどのPB商品。取引先を回っていると、ある日信頼するバイヤーから「うちのプライベートブランドもいいけど、自分のブランドのみそはどうするの?」と言われた。認知度のなさを悔しく思った林社長は自社ブランド商品『円熟こうじみそ』のリニューアルを決断。原料を有機大豆に変更し価格据え置きで売り込んだ。狙いどおりこれが大ヒットしひかり味噌の知名度も上がっていった。
林社長はセイコーエプソンでの海外勤務時代は、現地法人を相手にパソコン用のプリンタの手配などを行っていたという。ひかり味噌に入ってからも海外の仕事をやりたいという潜在意識があり、海外の大豆を円熟に使い、コメは小国産米100%、食塩も天日干しにしてコストは約2倍かかったが、輸入大豆をコンテナで海外から直送するこでコストダウン出来たという。
自社ブランドを成功させた林社長は2000年に社長に就任。2003年には米ロサンゼルスに営業所を開設。自ら売り込みに励んだが販売は伸び悩んだ。そんな時、出会ったのがシェフの松久信幸さん。ドライみそを製造できないかと相談され、NOBUで手作りしていたものを完璧に再現した。すると、NOBUが使っているならと他もひかり味噌を扱ってくれるようになり、海外売り上げは飛躍的に伸びた。
2018年に銀座に作った日本食レストラン。みその可能性を料理で示したいという思いが込められている。
林社長は、みそのいろいろな使い道をレストラン運営で発信できればとはな話した。また、小容量化と簡便性、鮮度を兼ね備えた商品開発が大事だとした。
ひかり味噌の林社長は「絶えることなく常に改革をする、体質改善をすることが基本。奇策はない」と話した。
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収録を終えた村上龍の編集後記。「ブランドや販路は自分で築く」というエプソンの社風に鍛えられたという。田舎のみそ工場とカラヤン、両者が矛盾なく、ひかり味噌で共存しているとした。